火災共済と火災保険の違いとは?補償範囲の違い、保険料・掛け金の違い、割引制度の違いなど、違いを徹底比較

はじめに

火災共済と聞いたことがある方は多いかと思います。テレビCM、街に貼られているポスター、投函されるハガキなどで目にした方も多いはずです。しかし、火災保険と何が違うのかよくわからず、火災保険みたいなものと把握している程度で詳しく内容を知っている方は少ないのではないでしょうか。今回は、そんな火災共済を、火災保険と比較しながら詳しくご紹介していきたいと思います。

火災共済も、火災保険同様、災害時に被害があった場合に補償を受けることができる保険であることには違いはなく、保険を検討する方なら火災共済も知っていることでより検討の幅が広がり、より自分に合った保険に加入することができます。是非この機会に火災共済をマスターしてみましょう。

火災共済とはなに?

火災共済とはなに?

火災共済とは、火災保険と同様、災害時や事故に遭った場合に、損害をうけた分の補償をしてもらうことができる損害保険と同じように共済金というものが支払われるものです。火災保険同様、補償の範囲を決め、それに応じた額の、掛け金を支払います。それによって、補償を受けることができるときは請求することで、共済金を受け取ることができます。

しかし、当然ながら全てが同じわけではありません。管轄の省庁や、定められている法律も違いますし、損害保険会社のような大規模な組織でもありません。それでは大きな違いをまず見ていきましょう。

火災保険と何が違うの?

火災保険と何が違うの?

火災共済と火災保険が大きく異なる点が4つあります。

  • 火災共済は、事業形態が非営利団体である
  • 火災共済は監督官庁、根拠法令が団体により異なっている
  • 火災共済には、加入条件がある
  • 剰余金が加入者に払い戻される

火災共済は、事業形態が非営利団体である

火災保険の事業形態は、民間の損害保険会社が運営していますので、営利団体であり、利益の追求を行います。加入者により支払われる保険料は、有価証券の購入や、貸付金として運用することで、利益を生み出し、企業としても成長していきます。損害保険会社は、歴史が100年以上になる企業もたくさんあり資本金も莫大にある大企業もたくさんあります。

一方、火災共済の事業形態は非営利団体であり、企業として利益を追求しません。それゆえ、加入者が支払った掛け金は、団体が運用することで剰余金が出れば、加入者に割戻金として返金されます。加入者も誰でも加入できるわけではなく、「共済組合」、「協同組合」といった団体の組合員を対象としていて、そのような会員の方が、火災保険と同じような補償内容のものを割安で加入することができる福利厚生事業のような位置づけにあると考えることがあります。

また、営利企業でもないので、損害保険会社のような広告なども行っていないので、運営費やコストも安く済んでいるため、掛け金も火災保険の保険料よりかは比較的低くされており、割戻金があった場合と合わせると、保険料などの支払いは火災保険より、火災共済の方が安く済むと考えられます。

火災共済は監督官庁、根拠法令が団体により異なっている

火災保険は監督庁が金融庁であり、保険業という法律のもとに成り立ち、運営されています。

一方、火災共済においては、取り扱う団体により監督官庁や、根拠法令は異なります。

JA共済という団体の場合、監督庁は農林水産省であり、根拠法令は農業協同組合法となります。また、全労災や県民共済の場合は、監督庁は厚生労働省、根拠法令は消費生活協同組合法となります。このように団体により監督官庁や、根拠法令が異なりますので、同じ共済といえど内容は異なる場合があります。

火災共済には、加入条件がある

火災保険は、保険料さえ支払えば、おおむね誰でも自由に保険会社を選び、希望の保険会社へ自由に加入(不特定多数)することができます。しかし、火災共済は、ある特定の条件を満たした(特定多数)を対象とした保障制度であるため、特定の地域に住む人、特定の職業に就く人などが共済組合に加入できます。

ただし、会員費などを納めれば、特定の団体に所属していなくても、火災共済へ加入することができる場合もあります。もし、気に入った火災共済を見つけ、しかし団体には加入していないという場合にも加入することができる方法がある場合がありますので、お気に入りの共済団体へ問い合わせてみて下さい。

余剰金が加入者に払い戻される

火災保険の損害保険会社は、加入者の保険料で有価証券を購入したり、貸付を行うことで運用しますが、利益が加入者に特別な契約を交わしていない限り、還元されることはありません。しかし、火災共済においては、非営利事業ですので、毎年決算後、余剰金が出た場合には、共済の加入者へ「割戻金」として還元されます。

それにより、もともと火災保険よりも比較的安く設定されてることが多い火災共済ですが、割戻金が還元されることで、実質より掛け金を支払う額は少なくなると考えることができ、保険料などを安く済ませたいと考えている方には魅力的な保険と考えることができます。

火災共済民間の火災保険
事業形態非営利団体営利団体
根拠法令協同組合保険法など保険業法
監督官庁厚生労働省、農林水産省など金融庁
加入条件など原則として組合員のみ

(一般の者、準組合員として回避など支払えば加入することができる場合がある)

保険料を支払えば誰でも加入することができる
受取人が請求して受け取るお金共済金保険金
加入者が支払うお金掛け金保険料
剰余金が生じた場合に加入者に払い戻されるもの割戻金配当金(特別な契約がない限り、原則払い戻されることはない。)

火災共済の補償範囲

火災共済の補償範囲
火災共済も火災保険の一般的な補償内容とほぼ同じです。

それでは、JA共済の建物更生共済『むてきプラス』を例として具体的にみてみましょう。

JA共済の建物更生共済 『むてきプラス』

JA共済とは、全国共済農業協同組合連合会といい、農業を行っている方々が加入することができる組合です。組合員同士、掛け金を支払っておくことで組合員が困ったときに集めた掛け金を、共済金として困っている組合員に支払われることで互いに助け合えるという相互扶助の理念で運営されています。

どちらも保険の対象は、「建物」、「家財」また「建物と家財」を選択することができます。

『むてきプラス』の補償内容、特徴、契約例

共済全般的に、火災の補償と風水害の補償に分けていることが多く、JA共済においても同様に火災等と風水害等に分けられており、風水害には地震の補償が含まれています。

選択できるプランのように見受けられますが、実質、風水害の補償を外すことができませんので、補償内容は選択できず一律のプランと考えるといいでしょう。

また、火災保険では、珍しくヒトに対する補償も付いています。こちらは、傷害共済金といい、共済金が支払われる事故や災害を原因として人契約者などが死亡した場合に、共済金額の30%(1,000万円を上限)が支払われます。この傷害共済金に関しては補償を外すことが可能です。必要が無ければ省くことができます。

また、大きな特徴として、満期金が設定されています。満期金に剰余金がある場合に引き当てられる割戻金もプラスされ支払われるため、積立保険のような側面があります。

さらに特徴として、農業をしている方たちを組合員としたJA共済ならではの、「畜舎・堆肥舎」なども建物として保険を掛けることができる「特定建築物」を補償の対象とするプランもあります。

台風などのとき

台風、暴風雨などによう風や雨の災害で、建物や家財に損害が生じた場合に補償を受けることができます。また、豪雪、雹災、竜巻等による損害も補償の対象となります。

大雨により、河川が氾濫したなどによる洪水により自宅が流されてしまった、また床上浸水となった場合に建物や家財に損害が生じた場合に補償を受けることができます。

火災・落雷などのとき

自宅から発生した火災や、近隣から発生した火災の延焼などにより火災が発生し、建物や家財に損害が生じた場合に補償を受けることができます。

また、落雷により屋根が損害をうけたり、電化製品がショートし、故障してしまった場合にも補償を受けることができます。

ガスボンベなどの爆発などにより損害をうけた場合にも補償を受けることができます。

また、給排水設備の故障などにより、建物や家財が水濡れの被害に遭った場合も補償を受けることができます。

盗難による家財の盗取、また泥棒などの侵入によりドアなどが破壊された場合も補償を受けることができます。

さらには、暴動やデモ行為により、建物が損害を受けた場合にもこちらの補償を受けることができます。

地震などのとき

地震、地震による津波や火山の噴火、爆発などにより建物や家財が損害をうけた場合に補償を受けることができます。

ケガ・死亡されたとき

契約した建物について発生した火災等や自然災害によって、ご家族や居住者の方等が200日以内に死亡、所定の後遺障害あるいは、所定の治療、施術を受けた場合は、傷害共済金を受け取ることができます。民間の火災保険では、このようなヒトに対する補償が付かないのが一般的ですので、共済の特徴と考えることができます。

保険が満期となった場合

建物更生共済は掛け捨てではありません。

保険期間が満了すると、満期共済金が支払われます。民間の火災保険では、掛け捨てとなる場合が一般的ですので、積立て保険のように満期金を受け取りたいと考える人は、共済がオススメとなります。

付帯させることができる特約

個人賠償責任共済

日常生活などで他人にケガをさせてしまった場合に、その損害賠償費用を補償してもらうことができます。例えば、自宅のベランダから植木鉢を落としてしまい、通行人にケガを負わせてしまった場合などの治療費やお見舞金の補償を受けることができとても安心です。こちらは、民間の火災保険でも特約で加入することができる場合が一般的で補償額の上限に差はあるものの、内容は同様と言えます。

費用共済金

民間の火災保険では費用保険金と呼ばれていて、損害保険金が支払われる場合に、損害保険金とは別途、必要な費用の補償として支払われる保険金です。共済においても同様に、費用共済金として、補償されます。JA共済には以下のような費用共済金が補償されます。

臨時費用共済金事故や災害に遭い、共済金が支払われる際に共済金とは別途、共済金の30%が必要な費用として支払われます。
特別費用共済金損害の割合が80%以上となった場合に、共済金の10%を共済金とは別途支払われます。
残存物取片づけ費用共済金火災等に遭った場合の、燃えカスや残存物の撤去廃棄費用の補償として、共済金の10%が支払われます。
損害防止費用共済金損害の発生および、拡大の防止のために費用を費やした場合に、実費分を支払ってもらえます。
失火見舞費用共済金近隣の方や、第三者へ損害を与えてしまった場合に、第三者1人当たり20万円まで見舞金として共済金が支払われます。(ただし、支払限度額20%を限度とする)
盗難再発費用共済金盗難による損害が発生した場合、再発防止に必要な費用として5万円が支払われます。

費用共済金は全て自動でセットされていますが、不要であれば省くこともできます。

契約例

火災共済金額:1,500万円

満期共済金額:50万円

協定共済価額:1,500万円

保険期間:30年(共済期間10年の2回継続する場合)

木造の建物の場合

年払い月払い
当初10年間75,819円6,601円
1回継続後69,467円6,044円
2回継続後68,223円5,936円

耐火造の場合(マンションなどの鉄筋コンクリート造りなど)

年払い月払い
当初10年間41,709円3,633円
1回継続後37,307円3,244円
2回継続後36,093円3,188円

払込方法、割引制度、掛金、評価方法など

払込方法・月払い、年払い

・口座振替、集金、JA窓口での支払い

割引制度共済掛金振替払いを選択すると、前期分の掛金を一括で支払い、JA共済が預かるというものです。月払い、年払いよりも掛け金の支払いは安くなります。
掛金保障額10万円分を1口とし、必要な保障分の口数加入するという仕組みになります。

住宅の場合(最高保障額4,000万円、400口)

必要保障額=住宅の坪数×1坪当たりの加入基準

加入基準とは、元通り、建物や家財を再建、再取得するのに必要な費用の目安を言います。建物に関しては、建物の構造や、地域によって1坪当たりの加入基準が設定されています。

例えば、所在地が東京都の木造住宅の場合、加入基準は1坪80万円、耐火構造であれば、90万円と設定されています。この場合、木造の場合は、最高保障額4,000万円加入したいと考えると、50口の加入が必要となり、耐火構造の場合は、およそ42口ほどの加入となります。

家財に関しては、最高保障額2,000万円、200口まで加入することができます。住宅の延べ床面積、世帯主の年齢、世帯人数から必要保障額を算出し、必要な口数を求めることができます。

評価方法再取得価格

掛金の設定方法は、火災保険の保険料を設定する場合と大きく異なります。保障額に応じた掛け金を支払うことになります。また、火災保険でいくつかの割引制度が設定されていますが、火災共済においては、全期間分を一括で支払う場合しか割引を受けることができません。

また払込方法に関しても、違いがあります。JA共済など、地域密着で支え合うという理念があるため、JAの窓口での支払いや集金があり特徴的と言えます。一方火災保険に関しては、クレジット払いで支払うことができるのが一般的です。

このように、各種制度に関しては、火災共済、火災保険と違いがあるので、近くにJA共済などがある場合はそちらが便利であるかもしれないですし、どのような利用方法が自分たちにあっているかなども考えてみるといいかもしれません。

火災保険の保険料との比較

民間の火災保険の保険料はいくらになるのでしょうか。

上記、火災共済の契約例と同様の条件で一戸建て、木造の場合の火災保険の保険料を3件見積もってみました。

保険会社保険期間・10年一括払い補償内容
日新火災10年・136,200円「火災、落雷、爆発」といった基本補償に、「水濡れ、物体の落下、飛来」、「風災、雹災、雪災」、「水災」、などフル補償。
損保ジャパン日本興亜10年・186,080円日新火災同様、フル補償。但し、全ての保証に、免責金額が3万円と設定されている。
セコム損保10年・174,740円上記同様フル補償。ただし、破損、汚損の補償に関しては、3万円の免責金額を設定。

契約例で紹介したJA共済の木造の年払いの部分のみ抜粋しました。

火災共済の木造一戸建て、年払い、30年契約の場合は下記のようになります。

年払い
当初10年間75,819円
1回継続後69,467円
2回継続後68,223円

上記、火災保険と火災共済を比較すると、日新火災の場合、10年136,200円にも関わらず、JA共済の場合は、年払いで75,819円とかなり割高に思えます。

というのも、火災保険は、5年払い、10年払いとすると長期一括払いの割引が適用され、10年割引の場合は、約18%の割引を受けることができます。それにより大幅に保険料が安くなります。さらには、これだけ保険料と掛金に差があるのは、火災保険には満期共済金がないことにも注意しなければなりません。

上記JA共済の契約例では、満期共済金が50万円と設定されていて、満期となることで、満期金プラス割戻金が合計して支払われます。また、JA共済には、地震保険と同様の地震火災が含まれていますが、火災保険は、別途地震保険にも加入しなければ補償を受けることができません。これらを考慮して火災保険、火災共済がどちらが自分たちに合った補償で、保険料、掛け金であるかをしっかりと判断してみましょう。

その他の火災共済とは

共済も、団体に応じて複数の共済組合があります。全労災の「すまいる共済」、また都道府県民共済の東京都の「新型火災共済」などがあります。

全労災「すまいる共済」とは

全労災とは、「全国労働者共済生活協同組合連合会」という正式名称で、管轄は厚生労働省となります。こちらの全労災でもJA共済同様に自宅の保険として火災共済「すまいる共済」が展開されています。組合員が家入の対象となっていますが、誰でも会費を支払うことで加入することができ、火災共済も加入することができます。

都道府県民共済「新型火災共済」

全国の都道府県に、各都道府県別に39ヵ所で運営されています。JA共済などと同様に、火災共済「新型火災共済」があります。所属する都道府県の共済へ加入することができます。

まとめ

まとめ
火災共済には、火災保険と似ているようで、異なる点がいくつかあります。火災保険の加入を検討されるなら、是非火災共済もじっくりと検討し、より自分に合った保険を選んでみてはいかがでしょうか。

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