賃貸物件のオーナーの火災保険の選び方とおすすめの特約・注意点

火災保険には、個人の契約以外に賃貸物件のオーナーが、一般の火災保険にプラスアルファで追加した方が良い特約があります。一般家庭の個人が所有する建物に対して契約できる火災保険では、建物と家財を補償しますが、賃貸物件を借りた場合は、家財補償のみ火災保険を契約しています。

そして、賃貸物件のオーナーは、家主としての責任と事業を営む場合に、不良の事故によるリスクを回避するためにも、必ず賃貸物件のオーナー向けの火災保険を契約する必要があります。

マンションやアパートのような集合住宅を1棟所有している、賃貸物件のオーナーなら建物全体に火災保険を契約して、なおかつ個々の部屋を貸している住居人が起こした事故にも対応するべく、賃貸物件のオーナー専用の特約を付帯して契約することが重要になっています。

同じ、賃貸物件のオーナーでも、分譲マンションの1室を賃貸にしている場合は、その部屋の所有部分の火災保険のみで問題ありません。なぜなら、建物全体や共有部分は、建物の管理組合側で火災保険を契約することになります。そして、貸している部屋の家財は、入居者が火災保険の家財補償のみ入居者自身で契約すれば良いからです。

それでは、賃貸物件のオーナーが契約する必要がある火災保険について、補償内容や特約の必要性をご紹介していきます。

賃貸物件のオーナーが契約する火災保険とは?

賃貸物件のオーナーが契約する火災保険とは?

賃貸物件のオーナーが契約する火災保険とは、一般の火災保険契約を基本にしていますが、それだけでは、補償しきれない部分を補うための特約が設けれている、賃貸物件のオーナー専用の特約が設けられた火災保険のことです。

火災や自然災害による損害だけでなく、突発的な不慮の事故で外壁や屋根が、剥がれた場合にも、火災保険で補償できるように、賃貸経営をするにあたって火災保険の契約は必然となります。

火災保険の中でも、賃貸物件のオーナー向けの商品を販売している保険会社は「あいおいニッセイ同和損保」「東京海上日動火災」「損保ジャパン日本興亜」「三井住友海上火災」「日新火災」「AIG損保」「セコム損保」「楽天損保」の8社です。

賃貸物件のオーナー向けの火災保険を販売していない保険会社では、必要な特約が設けられていないため、一般契約と同じ補償内容しか選べないことになるため、上記の8社から賃貸物件のオーナー向けの火災保険を選びましょう。

分譲マンションを賃貸しているオーナーの火災保険

分譲マンションを賃貸しているオーナーの火災保険

賃貸住宅のオーナーが、契約する火災保険は、建物の共有部分と専有部分の区別なく、建物全体に火災保険をかけることになります。ところが、分譲マンションの1室を賃貸しているオーナーの場合には、マンション1棟をまるごと所有しているわけではないため、部屋の専有部分のみ火災保険を契約することになります。

専有部分の建物の範囲は、契約書に基づいている範囲になるため、ベランダや玄関外の廊下などが共有となっている場合は、共有部分への火災保険の契約は不要です。共有部分は、建物の管理会社が契約している火災保険で補償の対象になるからです。

分譲マンションを賃貸しているオーナーでも、火災保険の補償範囲や特約は賃貸住宅のオーナーが契約する火災保険と同じと考えて良いでしょう。しいて言えば、マンションの最上階なら水災の心配がないため「水災補償」を外しても問題ない、というくらいの違いになります。

賃貸物件のオーナーの火災保険の選び方

賃貸物件のオーナーの火災保険の選び方

マンション等を1棟所有している賃貸物件のオーナーの火災保険の選び方については、一般の火災保険契約の基本補償は全て契約しておくほうが良いでしょう。分譲マンションの1室を賃貸しているオーナーと同じように、立地条件が高台にあり浸水被害がまったく考えられないような場所であれば「水災補償」を外せば良いでしょう。

その他「火災・風災・盗難・水濡れ・破汚損」については、外さない方が無難です。どれかひとつの補償を外して保険料をおさえることより、損害が発生して広大な被害が及んだときのリスクヘッジを意識しておくことが、賃貸物件のオーナーにとって大切になるからです。

火災保険を契約してさらに、地震保険も追加することを忘れないように、個人で火災保険を契約するよりも手厚い補償内容を選ぶことが大切です。

賃貸物件のオーナーの火災保険おすすめの特約

賃貸物件のオーナーの火災保険おすすめの特約

火災保険の基本補償に加えて、災害や自然災害以外にも、賃貸特有の事故物件による損害になども回避できるように、賃貸物件のオーナー専用の特約を必ず契約します。

賃貸物件に起こる可能性が高い、住居人の孤独死などの不慮の事故についても、ある程度は、火災保険の特約から補償されるため、それぞれの特約について理解しておくようにしましょう。

家賃収入補償特約

家賃収入補償特約とは、何らかの理由により入居者からの家賃が滞ってしまった際に一定期間の家賃収入を補償する特約です。損害を受けたことで家賃の損失額を実際の家賃月額と保険金の対象になる期間を限度に支払いる特約となります。

家賃補償特約の保険金額 = 家賃月額 × 保険金支払いの対象期間(復旧期間)

家主費用補償特約

火災の被害だけでなく、高齢化社会に伴う孤独死が懸念され「特定事由事故(自殺、犯罪死などの賃貸住宅の損害を伴う孤独死)」として補償されます。部屋の原状回復費用、遺品整理等費用に加えて、家主が負担する空室期間や値引期間などを契約内容に定められた期間補償する特約です。

建物管理賠償責任補償特約

賃貸物件では、入居者が退去するときは、入居したときと同じ状態に部屋の原状回復を義務付けられており、契約書の規約にもあります。賃貸契約中でも、室内の壁や柱の破損や火災で一部が燃えた場合は、入居者が加入している「借家人賠償責任補償特約」で、賠償してもれます。しかし、賃貸契約に基づき賃貸物件のオーナー側で、修理した場合には「建物管理賠償責任補償特約」で補償されます。

建物付属電気的・機械的事故補償特約

賃貸物件の建物設備で、電気的または機械的な事故が発生した場合に「建物付属電気的・機械的事故補償特約」から補償します。契約時に定めた免責金額を差し引いて保険金が支払われます。

マンション1棟を所有している賃貸物件であれば、エレベーターや共有部分の空調設備、照明など電気的および機械的な設備が多く備えられているため、この特約を付帯することをおすすめしますが、エレベーターなど大型の設備がない賃貸物件では、あまり必要が特約となり、必要に応じて選ぶことをおすすめします。

類焼損害補償特約

賃貸物件に限ったことではありませんが、火災による失火が隣の建物まで延焼しても、失火方により、法律上の賠償責任がないことなっています。しかし、賃貸物件のオーナーとして近隣への被害をそのままにしておくには、気が引けることもあるでしょう。

そのような場合に「類焼損害補償特約」を付帯しておくことで、復旧費用の不足した分の補償範囲内で保険金額を限度に支払われます。

賃貸物件のオーナーが契約する特約と入居者が契約する特約

賃貸物件のオーナーが契約の必要がある特約を説明してきましたが、入居者にも賃貸物件に向けた特約が設けられています。入居者向けには「借家人賠償責任補償特約」があり、火災以外にも何らかの突発的な事故で、借りている部屋に損害をあたえた場合には、入居者の賠償責任として本来は、入居者の火災保険にある「借家人賠償責任補償特約」で補償されます。

ここで重要になってくるのは、賃貸契約の規約内容が優先されるということです。賃貸物件の建物の補償をどの範囲までならオーナー側が、補償するかによって異なります。よって、入居者の側の「借家人賠償責任補償特約」ではなく、オーナーの火災保険にある「建物管理賠償責任補償特約」を優先さえて補償することも起こるわけです。

そのため、入居者が「借家人賠償責任補償特約」を付帯するから、オーナーが「建物管理賠償責任補償特約」を付帯しなくても良いとうことは考えられないことになります。

もうひとつ、入居者の火災保険で付帯することが多い「個人賠償責任補償特約」があります。賃貸物件で、この特約を使うようなケースは、洗濯機のホースが外れて水浸しになったことで、下の階の部屋に水が漏れてしまった場合です。

入居者個人の賠償責任があると判断された場合には「個人賠償責任補償特約」を使えますが、法律上の賠償責任がないようなケースがあれば、オーナーの火災保険から補償することも発生します。例えば、室内洗濯機置場に必要な防水パンを設置していなかったために、下の階への水漏れ被害となった場合などであえば、オーナー側の賠償責任が問われる可能性もあるためです。

地震保険

地震保険

賃貸物件のオーナーが、火災保険を契約する際には、地震保険も必ず追加しておきましょう。地震保険の補償範囲は「地震・噴火・津波」に加えて、それらが原因で発生した火災も含まれています。

地震による被害で、建物が倒壊しなくても少し傾いただけでも、状況によっては、全損と扱われることもあり、地震保険を契約して無駄なことはないでしょう。

地震保険は火災保険と考え方が異なり、建物が全損しても建物の金額の最高で50%までしか補償されません。なぜなら、大きな地震でも保険金の支払いが行き届くように、政府と民間の保険会社で共同運営となる地震保険の目的は、被害にあった後の当面の生活再建費用となるからです。

さらに地震保険は、建物の主要構造部「屋根・柱・基礎」に損害が発生しないと、補償の対象とはならず、保険金が支払われないことにも理解が必要です。例えば、門や外壁だけの損害は、地震保険の補償対象外となってしまいます。

だからといって、地震保険で保険金が支払われない可能性が高くなるとうこともありません。大震災になってくると、損害が写真判定になることも多く、地域一体を全損地区と判定されると、全損分の保険金が支払われるため、地震保険は必ず入りましょう。

火災保険と地震保険の補償範囲と加入の必要性

火災保険と地震保険の補償範囲と加入の必要性

賃貸物件のオーナーが契約する火災保険の補償内容の詳細をまとめてみましょう。

火災保険のリスクから、ひとつひとつの補償される範囲を良く把握して、不要な補償を省いいくと無駄なく火災保険を契約できます。

火災リスク(必要度:高)

  • 「火災・落雷・破裂・爆発」による損害を補償
  • 火災保険では主となる補償のため加入は必須
  • 落雷によるアンテナの修理も補償の対象

風災リスク(必要度:高)

  • 「風災・ひょう災・雪災」による損害を補償
  • 風災も標準補償になっているため加入は必須
  • 台風で屋根が、剥がれたり大雪で雨樋が破損した場合にも対象

水災リスク(必要度:高〜中)

  • 「床上浸水・地盤面より45cmを超える浸水」による損害を補償
  • 川が近くあり氾濫の可能性がある場合は必ず必要な補償
  • ただし浸水の心配がまったくない立地条件なら水災リスクを外しても問題ない

盗難水濡れ等リスク(必要度:中)

  • 「盗難・水濡れ・外部からの物体の衝突」による損害を補償
  • 予期せぬ人為的な事故のため賃貸物件には必要な補償
  • 盗難時に建物や窓への損害、自動車事故による損害も補償
  • 相手が特定できる場合であれば、賠償してもらえることも

破損等リスク(必要度:中)

  • 「突発的かつ偶然な事故破損」による損害を補償
  • 建物内部で発生した破損事故になり、住居部分は入居者の火災保険から補償される
  • ただし共有部分のベランダや廊下、ロビーなどは賃貸物件のオーナーの火災保険で補償
  • 相手が特定できる場合であれば、賠償してもらえることもある

地震保険(必要:高)

  • 「地震・噴火・津波」による損害を補償
  • 近年の日本では発生率が高くなると予想される地震に備えて加入は必要
  • 地震で発生した火災も地震保険の対象

賃貸物件は永続的に建物の修繕が必要

賃貸物件は永続的に建物の修繕が必要

賃貸物件は、火災など自然災害以外にも盗難などの犯罪被害の発生も懸念されます。また、隣が火災にあったことでの延焼で、損害を被った際にも隣の建物の所有者には、損害賠償の責任がないことから、賃貸物件のオーナー自身で、建物を復旧する必要があります。

いかなる状況であっても、賃貸物件には入居者が存在していることから、建物の損害は速やかに復旧する責任と義務もあるでしょう。そのような場合に火災保険や地震保険を契約しておくことが頼りになります。

火災保険では、外部からの衝突も補償しているため、自動車が建物にぶつかった場合にも保険金が支払われ、補償される範囲が意外にも広いことが特徴です。賃貸物件は永続的に建物の修繕が必要なことから考えても、火災保険を上手に活用できるように心がけましょう。

被災者生活再建支援法について

被災者生活再建支援法について

火災保険や地震保険とは別に、自然災害による被害に対する「被災者生活再建支援法」というの法律があります。近年の異常気象による台風の被害や地震などによる自然災害の影響であれば、被災者生活再建支援法による支援金で最大300万円まで補償されます。

ここで問題になってくるのは、被災者生活再建支援法の支援金の対象は、一般住宅の世帯で被害が生じた際を対象としており、賃貸物件は被災者生活再建支援法の対象にあらず、賃貸物件のオーナーは支援金を受け取ることができないという点です。

大きな損害を被った際には、火災保険や地震保険を頼りに再建に向けて自力で復興するようになることが想定されるため、火災保険や地震保険共に、充分に補償を厚くして契約することが大切になってきます。

賃貸物件のオーナーの火災保険の注意点

賃貸物件のオーナーの火災保険の注意点

賃貸物件のオーナーも個人と同じように、火災保険で補償される範囲は、住居部分を対象しています。同じ賃貸物件でも、事務所や店舗であったり設備什器の補償は別途、契約が必要なるため注意しましょう。

また、家財補償については、賃貸物件の家財は入居者が自分で火災保険を契約します、しかし、物件によってはオーナーが家財を準備して賃貸の部屋ごとに備えれいる場合もあるのではないでしょうか。

例えば、ベッドや物置があらかじめ設置されている「家具付き物件」であったり、冷蔵庫やエアコンの設置がある「家電付き物件」も、オーナーの所有物であるため、家財と考えられます。そのため、賃貸物件のオーナーは、建物のみ火災保険を契約することも多いのですが、状況によっては、家財も契約する必要があるため忘れないようにしましょう。

その他には、オーナー側で設置した家電が漏電してしまったり、建物がシロアリの被害にあったりなど、建物が古くても新しくても予期せぬ事故が発生するものです。

火災保険では、自然災害などの被害以外に日常生活における突発的な不慮の事故に対する、賠償責任補償特約が充実いているため、賃貸物件オーナー向けの特約で、補えることも意外に多くあって、いざというときに役に立つ保険となります。

賃貸物件のオーナーの火災保険は、個人の火災保険のように保険料の節約よりも、被害にあった場合の損害額が大きくなりやすいため、補償内容は手厚いほうが何よりも安心できるため、必要な特約をしっかりと付帯して契約するようにしておきたいものです。


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